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膠原病とPAH(CTD-PAH)

Ⅰ.疾患定義

結合組織病(膠原病)によって起こるPAHはCTD-PAHと呼ばれています

膠原病は1つの病気ではなく、免疫の異常(自己免疫疾患)により血管や臓器に炎症や変性を起こす病気の総称です。例えば、関節リウマチは膠原病の1つです。海外では、「膠原病」という用語が使用されなくなり、その代わりに「結合組織病(Connective Tissue Disease:CTD)」と呼ばれています1)

 

CTDは全身のさまざまな血管に異常を引き起こしますが、この異常が肺動脈に及ぶと肺動脈の血圧が高くなりPAHを引き起こすことがあります1)

 

CTD患者さんは、CTDではない人にくらべてPAHが多く起こることが知られています2)。CTDによるPAHは、「結合組織病に伴うPAH:CTD-PAH」と呼ばれています。CTDの中でも、いくつかの病気はPAHの原因となり得ることがわかっています(図)1)、3)

※自己免疫疾患:免疫は、本来体の中に入ってきた異物を攻撃して体の外に排除するように働いていますが、自己免疫疾患は免疫が自分の正常な細胞や臓器を攻撃する病気の総称です4)

1)桑名正隆. 循環器ジャーナル. 2018; 66: 330-6.より作成

2)Yang X, et al. Clin Rheumatol. 2013; 32: 1519-31.

3)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版) http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_fukuda_h.pdf(2020年6月閲覧)

4)病態と治療戦略がみえる 免疫・アレルギー疾患イラストレイテッド(編集 田中良哉)、羊土社、2013;P106-11.

Ⅱ.疫学情報

SScやSLE、MCTDは、日本人におけるCTD-PAHの主な原因となる疾患であることが報告されています1)

【調査の方法】
2000~2013年に新規にCTD-PAHと診断された患者さん61名の原因となるCTDとその割合を調査しました。

1)桑名正隆. 分子リウマチ治療. 2015; 8: 75-8.

CTDの種類によってPAHが起こりやすい年齢が異なっています1)、2)

SScによるCTD-PAHは、SScと診断されてから10年以上経過して起こることが多く1)、患者さんの多くが60歳以上の高齢の患者さんです2)
SLEやMCTDによるCTD-PAHは、20~40歳代の若い患者さんで起こることが多く3)、SLEやMCTDと診断されてからPAHと診断されるまでの期間は短い患者さんが多いとされています2)

1)Fischer A, et al. Arthritis Care Res. 2012; 64: 303-10.

2)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版) http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_fukuda_h.pdf(2020年6月閲覧)

3)Shirai Y, et al. Rheumatology(Oxford).2012; 51: 1846-54.

他の病気が原因となって起こるPAHの中で、CTD-PAHは最も高い割合(25.4%)を占めています1)

PAHに関する日本の研究の結果では、PAHの原因のうち「特発性(全く原因がわからない)PAH/遺伝性PAH」が最も高い割合(55.6%)を占めており、次いでCTD-PAHが高い割合(25.4%)を占めていました。また、CTD-PAHは、他の病気が原因となって起こるPAHの中で最も高い割合を占めていました(図)1)

【調査方法】
厚生労働省科学研究費の補助を受け開始されたレジストリー。日本の8施設において2008年4月~2013年3月の間に登録されたPAH患者189例(未治療患者108例、治療患者81例)のデータを収集した。
患者の適格基準は以下のとおりであった。

・18歳以上

・診断時に右心カテーテル検査のデータがあるPAHと診断された患者(安静時mPAP≧25mmHgおよびmPAWP≦15mmHg)

2008年4月~2013年3月の間に右心カテーテル検査でPAHと診断された患者を未治療患者、本研究開始前に診断されていた患者を治療患者とした。

mPAP:平均肺動脈圧、mPAWP:平均肺動脈楔入圧

1)Tamura Y, et al. Circ J. 2018; 82: 275-82. より作図

Ⅲ.主な症状

CTD-PAHの主な症状は「労作時の息切れ」です1)

PAHは進行性の病気です。CTD-PAHもPAHと同様に、より早期に発見し、より早期に治療を開始することが大切です。CTD-PAHの主な症状は、家事や歩行など体を動かした時に息苦しくなる「労作時の息切れ」です1)。その他に、失神、胸痛、倦怠感(体がだるい)などがみられます(図)1)、2)

しかし、CTD患者さんには肺や胃の調子が悪くなることや関節が動かしにくくなる、筋力の低下や貧血などがみられることがあり、このような要因が息切れの原因になることがあるため1)、どんな時に息切れを感じるか、どのくらいの程度の息苦しさなのかなど、日頃から自分の体調や症状に気を付けておくと、CTD-PAHの早期発見につながる可能性があります。労作時の息切れやいつもとは異なる症状に気づいたら、早めに主治医に相談しましょう。CTD-PAHの早期発見、または病気の進行を早い段階で見つけることができる可能性があります。

1)桑名正隆. 循環器ジャーナル. 2018; 66: 330-6.より作成

2)田村 雄一. 日内会誌. 2018; 107: 195-201.より作成

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重症度とPAHの症状

Ⅳ.診療科と検査

CTD-PAHの主な診療科は、膠原病内科と循環器内科です

CTDは主に膠原病内科やリウマチ科などで診療されていますが、PAHは主に循環器内科で診療されています。多くの場合、CTD-PAHの診療は両方の診療科が連携して行われます。
CTD-PAHの主な検査は心エコー検査、胸部X線検査、心電図検査、血液検査など1)ですが、これらの検査をどちらの診療科が行うかは病院によって異なります。しかし、CTD-PAHであることを確実に診断(確定診断)するためには、循環器内科で右心カテーテル検査を行う必要があります1)、2)

1)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_fukuda_h.pdf(2020年6月閲覧)

2)桑名正隆. 循環器ジャーナル. 2018; 66: 330-6.

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検査

Ⅴ.治療

CTD-PAHは、PAHの治療に使用するお薬を用いて治療します1)

CTD-PAHは、PAHの治療に使用するお薬を用いて治療します。PAHの治療では、狭くなった肺の血管を拡げるお薬を使用します1)
さらに、PAHに対するお薬を1剤で治療する単剤療法や、異なる作用のお薬を2剤または3剤組み合わせて治療する併用療法を患者さんの状態に応じて選べるようになり、治療後のCTD-PAH患者さんの経過はこれまでに比べて改善がみられるようになってきました1)、2)

※PAH治療薬には経口薬(飲み薬)の他に静注薬、皮下注薬、吸入薬もあります。

1)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_fukuda_h.pdf(2020年6月閲覧)

2)桑名正隆. 循環器ジャーナル. 2018; 66: 330-6.

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治療

Ⅵ.基礎疾患について

SSc、SLE、MCTDはCTD-PAHの原因となることがある主なCTDです

1)病態と治療戦略がみえる 免疫・アレルギー疾患イラストレイテッド(編集 田中良哉)、羊土社、2013;P106-11.

2)病態と治療戦略がみえる 免疫・アレルギー疾患イラストレイテッド(編集 田中良哉)、羊土社、2013;P146-52.

3)病態と治療戦略がみえる 免疫・アレルギー疾患イラストレイテッド(編集 田中良哉)、羊土社、2013;P131-40.

4)病態と治療戦略がみえる 免疫・アレルギー疾患イラストレイテッド(編集 田中良哉)、羊土社、2013;P159-65.

CTD-PAHは、PAHに対する治療を行うことにより症状の改善や病気の進行を抑えることが期待できるようになってきました。希望をもって、積極的に治療に向き合いましょう。

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